「見積もりをお願いしたいんですが」と切り出したあと、何を伝えればいいか迷うことはある。場所や希望時期など、分かることを先に整理しておくと、その後の相談を進めやすくなる。
私は元請けの番頭として、見積もり依頼を受ける側にいる。この記事では、最初に分かると助かる5つのことと、メールの例文をまとめる。工事内容や予算が決まっていなくても、相談して構わない。
この記事はこんな人向け
・これから業者に見積もりを頼もうとしている人
・電話やメールで何を伝えればいいか分からない人
・複数社に同じ条件で見積もりを頼みたい人

結論:最初に伝えるのはこの5つ
①どこを、どうしたいか(場所と工事内容)
②広さ・数量の目安(畳数、枚数、m数など分かる範囲で)
③いつ頃やりたいか(希望時期)
④予算の上限(伝えられる範囲で)
⑤現地調査に来られる日時の候補
この5つが分かると、概算を案内できるか、先に現地調査が必要かを判断しやすい。全部揃っている必要はない。分からない項目は「未定」「現地で確認してほしい」と伝えればいい。
手元の見積もりが適正か、1分で確かめるなら【Re:est】
全国122店舗のニッカホームが運営する概算見積もりサイト。一括見積もりではなく、項目を選ぶと個人情報なしでその場に概算が出る。番頭としては、他社の見積もりが高いか安いかを確かめる”物差し”として使うのが一番役に立つと思っている(対象エリアあり。評判と使う前に知っておく3つ)。
①どこを、どうしたいか
「リビングのクロスを張り替えたい」「和室を洋室にしたい」のように、場所と工事内容をセットで伝える。ここが曖昧だと、業者側は何を見積もればいいか分からない。「なんとなく古くなったので綺麗にしたい」でも構わないが、その場合は「どの部屋が一番気になるか」だけでも伝えると話が早い。
写真があれば、部屋全体と気になる箇所を送ると状況が伝わりやすい。ただし、写真だけで壁の内部や必要な補修範囲まで判断できるわけではない。
②広さ・数量の目安
「6畳」「壁4面」「廊下5mくらい」——正確でなくていい。だいたいの規模が分かるだけで、概算の精度が大きく変わる。分からなければ「分からないので現地で測ってほしい」と正直に言えばいい。番頭としては、分からないことを分からないと言ってもらえる方がありがたい。
③いつ頃やりたいか
「来月中に」「年内に」「時期は未定」といった希望を伝えると、職人の空き状況と照らして相談しやすくなる。急いでいない場合も、そのまま伝えて構わない。
④予算の上限
予算の共有は必須ではないが、上限が分かると、施工範囲や材料の候補を絞りやすい。金額を決められない場合は、希望する工事の概算を聞いてから考えてもいい。予算内に収めるために何を変えたかは、内訳で確認しよう。
伝え方は「上限〇〇万円くらいで考えています」で十分。細かい根拠は要らない。
⑤現地調査の候補日
現地調査が必要な場合は、在宅できる候補日を2〜3つ伝えると調整しやすい。調査内容は工事によって異なり、壁などを開ける検査は事前の説明と合意が必要だ。必要な確認と説明については業者選びの記事にもまとめている。
そのまま使えるメール例文
見積もり依頼メールのテンプレート
件名:内装リフォームの見積もり依頼(〇〇市・戸建て)
〇〇株式会社 ご担当者様
はじめまして。〇〇市在住の〇〇と申します。
自宅(戸建て/マンション)の内装リフォームについて、見積もりをお願いしたくご連絡しました。
【工事内容】リビング(約12畳)と廊下のクロス張り替え、リビングの床をフローリングに変更
【現状】築〇年、クロスに浮きと黄ばみあり(写真を添付します)
【希望時期】〇月中に着工できれば理想です
【予算】上限〇〇万円程度で考えています
【現地調査】〇月〇日(土)午前、〇月〇日(日)終日であれば在宅しています
他社にも同条件で見積もりをお願いする予定です。
お手数ですが、現地調査の可否と、おおよその日程をご連絡いただけますと幸いです。
〇〇(氏名)
電話:〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
最後の「他社にも同条件でお願いする予定です」の一文は入れておいた方がいい。業者側には相見積もりであることが伝わるし、それで態度が変わる業者なら、その時点で候補から外していい。相見積もりの取り方そのものは相見積もりは何社取ればいいかで詳しくまとめている。
電話で頼む場合
電話でも伝える内容は同じだ。5つの項目をメモしておくと話しやすい。「現地を見ないと分からない」と言われた場合は、何を確認する必要があるか聞いてみよう。電話で金額が出た場合も、概算か確定額か、どの条件を前提にしているかを確認しておく。
依頼の前に決めておかなくていいこと
逆に、最初の段階で決めていなくていいこともある。壁紙の品番、床材の種類、細かい仕様——これらは現地調査のあとに業者と相談しながら決めればいい。「全部決めてから頼まないと失礼かな」と思って依頼が遅れる人がいるが、受ける側からすると、決まっていない方が提案の余地があってやりやすい。
内容が未定なら、まず相談から始めていい
工事内容や予算が決まっていなくても、気になる場所を伝えて相談できる。小さな補修でDIYを考えているなら、壁紙の浮きの見極め方も参考になる。ただし、傷みの原因や下地の状態が分からない場合は、金額の大小だけで自己判断しないでほしい。
最初から正式な見積もりを出せない場合は、概算を聞き、施工範囲や優先順位を整理していこう。「どこをどうしたいか」が決まっていれば共有し、決まっていない部分は業者と相談すればいい。
ここから先は、見積もりでよく聞かれる7つの疑問に番頭として答える
ここまでが「頼み方」。ここから下は、見積もりを頼んだ後に出てくる疑問を、受ける側の立場でまとめて答える。以前は1つずつ別の記事にしていたが、どれも「見積もりの段階で知っておきたいこと」なので、この1本にまとめた。気になる見出しだけ読んでもらえればいい。

見積もりの連絡が遅い。どこまで待っていい?
結論
- 小さい工事(品番確定済み)は1〜3日、部屋丸ごとなど大きい工事は1週間前後が目安。現地調査が必要な内容ならこの日数に調査の予約待ちが乗る。
- 遅れる原因の多くは「サボっている」ではなく、普段使わない材料の商社見積待ち・現地調査の日程調整・他の現場との掛け持ち。
- 目安を過ぎても連絡がないなら、催促してOK。まともな業者なら「すみません、○日までにお送りします」と即答できる。答えが曖昧な業者は、工事中の対応もその調子だと思っていい。
見積もりにかかる日数の目安
仕上材の品番がすでに決まっている小さい工事なら、こちらの作業自体は1日で終わる。部屋丸ごとのような大きい工事でも、材料さえ確定していれば3日あれば出せる。ここまでは「書く側」の実感として、そんなに大きくブレない。
時間がかかるのは、決まっていない部分が残っているとき。仕上材が未定なら選定のやり取りが挟まるし、現地を見ないと拾えない数量がある工事は、まず現地調査の日程を合わせるところから始まる。職人の日程は客側の都合にも左右されるので、ここは業者だけの問題でもない。
「連絡が遅い」のは実は業者側だけの問題じゃないことも多い
見積もりが遅れる理由を並べると、だいたいこの4つのどれかに当てはまる。
1. 普段使わない材料の値段待ち
いつも扱っている材料なら値段はすぐ出る。ただ、指定のメーカー・型番が普段の仕入れルートにないものだと、商社に価格を問い合わせてから返事が来るまで数日かかることがある。これは業者側の怠慢というより、流通の都合。
2. 現地調査の予約が埋まっている
繁忙期(引っ越しシーズン前後や補助金の申請時期など)は、現地調査の予約自体が数日〜1週間先まで埋まることがある。調査してからでないと拾えない数量がある以上、ここが詰まると全体が遅れる。
3. 他の現場と掛け持ちしている
見積もり担当が現場も兼務している中小の業者だと、日中は現場に出ていて、見積書を作る時間は夜や早朝にしか取れないことがある。連絡が遅い=優先順位が低いとは限らない。
4. 単純に忘れている・後回しにしている
正直に言うと、これもゼロではない。依頼が多い時期に「後で出そう」と積んだまま忘れる、というのは業者側の管理の問題。ここは擁護できない。
どこまで待っていい?催促のタイミング
目安は「小さい工事なら3日、大きい工事なら1週間」。この日数を過ぎても何の連絡もないなら、催促して構わない。むしろ、催促されて嫌な顔をする業者の方がおかしい。
催促のときに見ておきたいのは、返事の中身。「すみません、○日までにお送りします」と具体的な日にちで即答できる業者は、遅れてはいても管理はできている。逆に「もう少しお待ちください」だけで終わる、期日が出てこない業者は要注意。見積もりの段階でこれなら、契約後の追加費用や工期の連絡も同じ調子になる可能性が高い。
個人情報なしで見積もりは取れる?
結論
- 個人情報なしで分かるのは「概算」まで。正式な見積もりは現地を見ないと作れないので、どの会社でも連絡先は必要になる。
- 概算だけ知りたいなら、リフォーム会社が自社で出している概算見積もりサイト(Re:estなど)や、メーカーのシミュレーションで足りる。この段階で電話は来ない。
- 連絡先を渡す段階に進むなら、「連絡はメールで」「○日までに決める」「相見積もり中」の3つを最初に書く。これで営業電話はほぼ止まる。
なぜリフォーム会社は連絡先を欲しがるのか(番頭の本音)
先に会社側の事情を書いておく。番頭として見積もりを作る時、現地を見ずに出せる数字は「概算」まで。クロスの張替えひとつでも、下地の状態、家具の量、天井の高さ、エアコンや建具の数で金額が変わる。現地調査をして初めて、材料の数量と職人の手間が拾える。
だから「正式な見積もりが欲しい」と言われた時点で、現地調査の日程を決める必要があって、そのために連絡先が要る。これは営業のためというより、段取りのため。ただ、会社によっては営業部隊が連絡先を使って追いかけるので、「個人情報を渡したら電話が来る」という印象になっている。
つまり、問題は「連絡先を渡すこと」ではなく「渡した後に、何の目的で使われるか」。ここを分けて考えると対策が立てやすい。
個人情報なしで分かること、分からないこと
| 知りたいこと | 個人情報なしで分かるか | 方法 |
|---|---|---|
| 工事の相場(だいたいいくらか) | 分かる | 会社の概算見積もりサイト、メーカーのシミュレーション、相場記事 |
| 手元の見積もりが高いか安いか | だいたい分かる | 同じ条件で概算を出して並べる |
| うちの家でいくらかかるか(正式見積もり) | 分からない | 現地調査が必要=連絡先が必要 |
| どの会社に頼むか | 途中まで | 口コミや施工例は見られるが、担当者の対応は会ってみないと分からない |
個人情報なしで概算を出す方法
① リフォーム会社の概算見積もりサイト
大手のリフォーム会社が、自社の単価で概算を出せるサイトを持っていることがある。代表的なのはRe:est(リエスト)で、全国122店舗のニッカホームが運営している。工事の種類と内容を選ぶと、その場で概算が出る。名前も電話番号も入れないので、この段階で電話が来ることはない。
番頭として言うと、こういう概算は「その会社の単価表で計算した金額」なので、他社の見積もりが手元にあるなら、物差しとして使える。差が大きければ、どちらかの見積もりに理由がある。
② メーカーのシミュレーション
キッチン、ユニットバス、トイレなどは、メーカーのサイトに商品代のシミュレーションがある。ただしこれは商品代だけで、工事費(撤去、配管、電気、内装の復旧)は入らない。水回りの工事は商品代と工事費が半々くらいになることも多いので、メーカーの金額を2倍弱したあたりが目安になる。
③ 相場記事で部位ごとの幅を知る
クロスや床なら、このブログの6畳のクロス張替え費用やクロスの単価のように、職人側の単価から逆算した記事がある。「一式○○万円」ではなく、数量×単価で考えると、見積書をもらった時に読めるようになる。
相見積もりは失礼?取られる側の本音
結論
- 相見積もりは失礼ではない。リフォーム会社は「3社のうち1社に選ばれる」前提で見積もりを書いている。隠す方が、むしろ段取りが狂って迷惑になる。
- やってはいけないのは3つ。①他社の見積書をそのまま見せて「同じ金額にして」②最初から頼む気のない会社に現地調査だけさせる③決まった後に残りの会社へ連絡しない。
- 一番いい形は、頼む時に「相見積もりです、○日までに決めます」と言うこと。これだけで、こちらは仮予定を軽く入れて待てる。
相見積もりは失礼?番頭の答えは「むしろ言ってほしい」
見積もりを書く側の実情を書くと、依頼が来た時点で「これは相見積もりだろう」と思って書いている。リフォームは金額が大きいので、比べるのが普通。1社で即決する人の方が少ない。だから「他にも頼んでいます」と言われても、何とも思わない。
逆に困るのは、相見積もりだと言われずに「この会社で決まりそうだ」と思って動いてしまうこと。番頭の仕事で言うと、職人の予定表に仮で日程を入れて、材料屋に品番の在庫を確認して、工程表の下書きを作る。これを本気でやった後に「他社に決めました」と来ると、動かした分が全部無駄になる。相見積もりだと分かっていれば、仮予定は軽く入れて、決まってから本気で動く。つまり、言ってもらった方がこちらの損が小さい。
「失礼かな」と思って黙っている方が、結果的に迷惑になっている。ここは逆に考えてほしい。
やってはいけない相見積もり3つ
相見積もり自体は問題ないが、取られる側が「それはない」と思うやり方は3つある。どれも、やっている本人に悪気がないことが多い。
① 他社の見積書をそのまま見せて「同じにして」
一番多くて、一番困るのがこれ。A社の見積書をB社に見せて「この金額にできますか」と聞く。番頭の立場だと、内容を見ずに金額だけ合わせろと言われているのと同じで、やるなら項目を削るか、下地処理を抜くか、職人の手間を減らすしかない。安くなった分、どこかが薄くなる。それで仕上がりに文句が出ても、こちらは説明のしようがない。
見積もりを比べる時は、金額ではなく「項目」を見る。A社に入っていてB社に入っていない項目があれば、「この項目はなぜ入っていないんですか」と聞く。これなら、B社は「うちは下地処理をこう考えているので」と説明できるし、答えられない会社は分かる。見積書の見方に、項目の見方をまとめてある。
② 頼む気のない会社に現地調査だけさせる
「本命は決まっているけど、比較のために他社にも見積もりを頼む」。これ自体は普通にある。ただ、最初から頼む気がゼロなのに現地調査に2時間かけさせるのは、取られる側としては正直きつい。現地調査は会社の持ち出しで、番頭や担当者の半日が消える。
比較の材料が欲しいだけなら、個人情報なしで概算が出るサイト(Re:estなど)やメーカーのシミュレーションで足りる。現地調査を頼むのは、「条件が合えばこの会社に頼んでもいい」と思える会社だけにする。詳しくは個人情報なしで概算を出す方法に書いた。
③ 決まった後、残りの会社に連絡しない
相見積もりで一番多い「失礼」は、実はこれ。断りの連絡をしないまま放置する。番頭側は返事がないと「まだ検討中」と受け取るので、仮予定を持ち続ける。別の案件で職人を使いたい時に、その仮予定が邪魔になる。
断りの連絡は3行でいい。「他社に決めました、ありがとうございました」で終わり。理由も要らない。見積もりの断り方に、そのまま使える文面を置いてある。
失礼にならない相見積もりの頼み方
依頼する時に伝える3つ
- 「他にも2社ほど見積もりを頼んでいます」。社数まで言う必要はないが、相見積もりだと分かればいい。
- 「○月○日までに決めます」。期日があれば、こちらはそれまで待てばいい。
- 「条件が合えばお願いしたいと思っています」。本気で比べていると伝わる。これは本当にそう思っている時だけでいい。
この3つを言った上で見積もりを取り、決まったら残りに断りを入れる。これが取られる側から見た「失礼じゃない相見積もり」の全部だ。見積もり依頼の伝え方に、依頼文の例を載せている。
値引き交渉で何が削られるか
結論
- 値引き交渉はしていい。ただし「総額をいくらにして」ではなく「どの項目を調整できますか」と聞く。総額だけ下げると、見えない所(下地処理・養生・材料のグレード)が削られる。
- 下がりやすいのは、材料のグレード、工事の範囲、時期。下がらないのは、職人の手間と、安全・下地に関わる項目。ここを削る会社は、やめた方がいい。
- 一番効く交渉は、値引きを頼むことじゃなく、同じ条件で2〜3社の見積もりを並べて「この項目の考え方が違うのはなぜか」を聞くこと。
番頭の本音:「安くして」と言われた時、何をしているか
見積もりを書く側の実情を正直に書く。「もう少し安くなりませんか」と言われた時、番頭がやることは2つしかない。項目を削るか、単価を下げるか。
単価を下げる、というのは、職人の手間賃を下げるか、会社の利益を削るかのどちらか。職人の手間賃は、こちらが勝手に下げられるものではない(下げれば、その職人は次から来ない)。会社の利益は、最初から薄く見積もっていれば、もう下げる余地はない。だから単価で下げられるのは、せいぜい数%。
残るのは「項目を削る」。ここが問題で、お客さんの目に見えやすい項目(キッチンの本体、クロスの品番)を削ると、すぐ分かって嫌がられる。だから見えにくい項目から削られやすい。下地処理、養生、既存の撤去の手間、廃材の処分費。こういうところが薄くなる。仕上がった直後は分からないが、1年後にクロスが浮いたり、床が鳴ったりする原因になる。
これが、「値引きしてもらったのに後で損した」が起きる仕組みだ。
下がる項目・下がらない項目
| 項目 | 値引きで動くか | 番頭の補足 |
|---|---|---|
| キッチン・ユニットバスなどの商品 | 動く | グレードを1つ落とす、型落ちや在庫品にする。商品代が大きい工事ほど効く |
| クロス・床材のグレード | 動く | 量産品にすれば下がる。ただし1部屋あたりの差は小さい |
| 工事の範囲 | 動く | 「今回は洗面台を見送る」など。一番確実に下がる |
| 工事の時期 | 動くことがある | 繁忙期を避けて職人の空き日に合わせると、調整しやすい会社もある |
| 職人の手間賃 | ほぼ動かない | 下げると職人が来なくなる。ここを下げる会社は、職人の質が落ちる |
| 下地処理・養生・撤去 | 動かしてはいけない | ここを削ると、仕上がりと保証に響く。削って安くする会社は避ける |
| 諸経費 | ほぼ動かない | 会社の運営費。諸経費の中身で書いた通り、ゼロにはならない |
つまり、値引きで本当に下がるのは「商品のグレード」と「工事の範囲」の2つ。それ以外を削って安くなった見積もりは、どこかが薄くなっている。
やってはいけない値引き交渉
- 「○○万円にしてくれたら決めます」と総額だけ言う。こちらは中身を見ずに削るしかなくなる。削られた場所は、お客さんには見えない。
- 他社の見積書を見せて「同じにして」。項目の違いを無視して金額だけ合わせることになる。これは相見積もりで一番困るやり方でもある。
- 契約直前に「あと1割」。番頭の立場で言うと、これをやられると、工事中の追加や手直しの相談で、こちらの気持ちの余裕がなくなる。小さい手直しをサービスでやる余地が消える。
見積書の「一式」は聞いていい?
結論
- 養生、清掃、運搬、小さな雑工事の「一式」は普通。数量で書きようがないものは、書く側も一式にする。
- 聞くべきなのは、金額が大きい項目の一式。「クロス工事一式」「キッチン工事一式」「解体一式」は、数量・単価・品番が出せるはずの項目なので、内訳を聞いていい。
- 聞き方は「この一式の中に、何が入っていますか」。疑う言い方にしなくていい。番頭は、答えられる一式なら普通に答える。答えられない一式が問題。
番頭はなぜ「一式」と書くのか
書く側の実情から。見積書の項目には、数量×単価で書けるものと、書けないものがある。クロスなら「○㎡×単価」、床なら「○㎡×単価」と書ける。でも、養生(床や家具を保護するシート貼り)は「何㎡」と数えても意味が薄いし、現場の清掃や廃材の運搬も同じ。こういうものは、こちらも「一式」と書くしかない。
もう1つ、一式にする理由がある。手間を省くためだ。小さい工事で、項目を10行も20行も書くより「内装工事一式」でまとめた方が早い。悪気はないが、お客さんから見ると中身が見えない。これが「聞くべき一式」の正体で、多くの場合、聞けば内訳は出てくる。
問題になるのは、「出せるはずの内訳を出さない一式」。金額の大きい項目を一式でまとめて、聞かれても「だいたいこれくらいです」で終わる会社は、拾い漏れがあるか、余裕を乗せているか、そもそも拾っていない。拾い漏れが誰の負担になるかで書いた通り、ここは契約前に潰しておきたい。
問題ない一式・聞くべき一式
| 項目 | 一式でいいか | 番頭の補足 |
|---|---|---|
| 養生・清掃・運搬 | 一式でいい | 数量で書きようがない。金額が工事全体の数%以内なら普通 |
| 廃材処分 | どちらでも | 「㎥」や「t」で書く会社もあるが、一式も多い。処分費の中身は聞いておく |
| 諸経費 | 一式でいい | 会社の運営費。諸経費とはで書いた通り、率や額の根拠は聞いていい |
| クロス・床・塗装などの仕上げ | 聞くべき | 数量(㎡・m)と単価、品番が出せるはず。一式なら「何㎡で、品番は何ですか」 |
| キッチン・ユニットバスなどの設備 | 聞くべき | 本体の品番・定価・掛け率と、工事費は分けて出せる。合算の一式は内訳を聞く |
| 解体・撤去 | 聞くべき | 何を撤去するかで金額が大きく変わる。範囲を書いてもらう |
| 下地処理・補修 | 聞くべき | ここが一式で小さいと、現場で「追加」になりやすい。何を想定しているか聞く |
| 電気・水道などの付帯工事 | 聞くべき | 「コンセント○か所」「配管○m」のように書ける。一式なら範囲を確認 |
目安として、工事全体の金額に対してその一式が1割を超えていたら、中身を聞く。1〜2万円の養生一式を細かく聞く必要はない。
内訳の聞き方(疑っている感じを出さずに)
番頭として、聞かれて嫌な聞き方と、答えやすい聞き方がある。
答えやすい聞き方
- 「クロス工事一式の中に、何が入っていますか。㎡数と品番を教えてもらえますか」
- 「解体一式は、どこまで撤去する前提ですか」
- 「他社の見積もりと項目を合わせて比べたいので、内訳を分けてもらえますか」
避けた方がいい聞き方
- 「この一式、何か上乗せしてませんか」(内訳が出てきても、関係がぎくしゃくする)
- 「一式はおかしいでしょ」(養生など、一式が普通の項目もある)
3つ目の「他社と比べたいので」は、相見積もりの時に特に使える。番頭側は、比べられると分かっていれば、項目を揃えて出し直す。相見積もりは失礼?で書いた通り、比べていることは言った方が話が早い。
大手と地元工務店、どっちに頼む?
結論
- 大手と地元で違うのは「仕上がり」ではなく、「段取りする人の数」「経費の乗り方」「何かあった時の窓口」の3つ。職人は同じ地域の同じ人が入ることが多い。
- キッチン・浴室・間取り変更のように職種が多い工事は、段取りの体制がある方が安心。クロス・床・建具のような1〜2職種の工事は、地元の工務店の方が経費が乗らない分、安く早いことが多い。
- どちらにしても、1社で決めない。大手1社と地元1〜2社の見積もりを同じ条件で並べると、「大手の経費はいくらか」「地元の段取りはどうか」が自分の目で分かる。
現場の実情:壁を貼っているのは同じ職人
職人側の実情から書く。内装の職人は、1つの元請けに専属で付いていることは少なく、何社かの元請けから仕事をもらって現場を回している。大きい会社の現場に入った翌週に、地元の工務店の現場に入る。これは普通のことで、だから「大手だから職人の腕がいい」「地元だから雑」という差は、現場レベルではあまりない。
仕上がりに差が出るとしたら、それは職人の腕ではなく「段取り」の差。前の職種(たとえばボード)が終わった状態を、次の職種(クロス)がきちんと確認してから入れるかどうか。これは元請けの担当者が現場をどれだけ見ているかで決まる。下請け丸投げの話で書いた通り、問題は「誰が職人を使っているか」ではなく「誰が段取りしているか」にある。
大手と地元で本当に違う3つ
| 大手リフォーム会社 | 地元の工務店 | |
|---|---|---|
| 段取りする人 | 営業・現場監督・積算が分かれている。担当が複数いる | 社長か番頭が1人で見積もりから工事まで見る |
| 経費の乗り方 | 広告費・ショールーム・人件費が乗る。同じ工事で1〜3割高いことが多い | 経費が薄い。その分、見積もりが「一式」でざっくりなことも |
| 何かあった時 | 会社としての窓口がある。担当が変わっても引き継がれる | 社長に直接つながる。早いが、社長が忙しいと止まる |
| 見積もりの出方 | 項目が細かい。書式が整っている | 会社による。細かい所もあれば、一式が多い所も |
| 保証 | 書面で出る。期間と対象が決まっている | 口頭のことがある。保証の確認は先にしておく |
| 工事中の連絡 | 担当者経由。担当者の質で変わる | 社長か番頭に直接。担当者と合わない時の逃げ場は少ない |
番頭として言うと、大手の「高い」は、手抜きではなく経費の構造。諸経費の中身で書いた通り、営業・監督・積算と人が分かれていれば、その分の人件費が工事に乗る。代わりに、担当者が1人倒れても会社が回る。地元の工務店は、社長が全部やるので経費は薄いが、社長の段取りの質がそのまま工事の質になる。
工事の種類で決める
地元の工務店が向く工事
- クロス・床の張り替え、建具の調整、トイレ・洗面台の交換など、1〜2職種で終わる工事
- 50万円以下くらいの小さい工事。大手は経費の比率が高くなり、受けたがらないこともある
- 家の近くで、何かあった時にすぐ来てもらいたい工事
大手(または段取りの体制がある会社)が向く工事
- キッチン・浴室の交換、間取り変更など、解体・水道・電気・内装の5職種以上が絡む工事
- 工期が2週間を超える工事。担当者が1人だと、他の現場と重なった時に止まる
- 書面の保証と、担当者が変わっても引き継がれる窓口がほしい工事
ただし「大手=段取りがいい」とは限らないし、「地元=段取りが弱い」とも限らない。地元の工務店でも、番頭を置いて工程表を出す会社はある。見分け方は、見積もりの時に「工程表は出ますか」「工事中の連絡は誰にすればいいですか」と聞くこと。即答できる会社は、規模に関係なく段取りの体制がある。
見積もりの断り方
結論
- 断りはメールかLINEで、3行でいい。「他社に決めた」「ありがとう」「以上」。理由は書かなくていい。
- 断られる側が一番困るのは、断られることではなく「返事がないこと」。返事がない見積もりは、職人の仮予定と材料の仮押さえがそのまま残る。
- 断った後にしつこく営業されることは、まともな会社ならほぼない。断りの連絡をした時点で、こちらの中では案件が終わる。
番頭の本音:断られるのは慣れている。困るのは「音沙汰なし」
相見積もりを取られている時点で、こちらは3社のうち1社しか選ばれないことを分かって見積もりを書いている。だから断られること自体は、慣れているし、気にしていない。
困るのは、返事が来ないことだ。見積もりを出した案件は、こちらの中では「進行中」の扱いになっている。番頭の仕事で言うと、職人の予定表に鉛筆で仮の日程を入れ、材料屋に品番の在庫を聞き、工程表の下書きを作っている。返事が来ないと、この仮の状態がずっと残る。別の案件でその職人を使いたい時に「あの案件、まだ返事がないから空けておくか」となって、こちらも、その職人も損をする。
だから、断りの連絡は「気を遣って入れるもの」ではなく、「こちらの段取りを解放してくれるもの」だと思ってほしい。断りが来た瞬間に、仮予定を消して次に進める。それだけで十分ありがたい。
断りの文面はこれでいい(3パターン)
長く書く必要はない。番頭として受け取って「十分」と思う文面を、そのまま使える形で置いておく。
① 他社に決めた時(基本形)
「お世話になっております。○○の件でお見積もりをいただいた△△です。検討の結果、今回は他社にお願いすることにしました。現地調査からお見積もりまで、ありがとうございました。」
② 今回は工事自体を見送る時
「お世話になっております。○○の件、家族で相談した結果、今回は工事そのものを見送ることにしました。お時間をいただいてすみません。またお願いする時はご連絡します。」
③ 電話で言う時
「見積もりをいただいた△△です。今回は他社さんにお願いすることにしたので、そのご連絡でした。ありがとうございました。」で切っていい。理由を聞かれたら「総合的に判断して」で足りる。
共通しているのは、理由を書いていないこと。理由は聞かれない限り書かなくていいし、書くとかえって話が長くなる。「金額が高かった」と書けば「いくらなら」と返ってくるし、「対応が」と書けば謝罪の電話が来る。断りに理由は要らない。
理由を書いた方がいいケース
基本は理由なしでいいが、例外が2つある。
- その会社にまた頼む可能性がある時。「今回は工期の都合で他社にしました。次の工事ではまたお願いしたいです」のように書いておくと、こちらも次に声をかけやすい。本当にそう思っている時だけでいい。
- 見積もりに明らかな拾い漏れや間違いがあった時。「浴室の換気扇が見積もりに入っていなかったので」と一言あると、こちらは次の案件で直せる。これは親切で、番頭としては本当にありがたい。拾い漏れが誰の負担になるかは別記事に書いたが、契約前に気づいて教えてもらえるのが一番いい。
よくある質問
Q. 予算を伝えると、その金額ギリギリの見積もりにされませんか?
A. 予算を伝えても、金額の根拠は内訳で確認しよう。上限を伝えるかどうかは自分で決めていい。条件を揃えた比較と、見積書の中身を見る力が判断の助けになる。
Q. 写真はどんなものを送ればいいですか?
A. 部屋全体が分かる引きの写真と、気になっている箇所(浮き・汚れ・傷)の寄りの写真があれば十分。明るい時間帯に撮ると状態が伝わりやすい。
Q. 何社に同時に頼んでいいですか?
A. まず2〜3社を目安にすると比較しやすい。社数を増やすほど連絡や現地調査の調整も増えるので、対応できる範囲で頼もう。
見積書の有効期限が近づいている、あるいは「期限が切れると値上がりする」と言われている場合は、見積書の有効期限、切れたらどうなる?で、金額が本当に変わるケースをまとめている。
見本帳で量産と1000番のどちらを選ぶか迷ったら、量産クロスと1000番クロス、何が違う?で、一番の違いと「全部1000番にする必要はない」理由をまとめている。
床の工事で「重ね張り」をすすめられたら、フローリングは重ね張りと張り替え、どっちがいい?で、重ね張りで済む床・済まない床の見分け方をまとめている。
住みながらの工事で家具の移動をどう扱うかは、住みながらクロス張り替え、家具はどうする?で書いた。依頼のときに家具の量と動かせないものを伝えておくと、見積もりが正確になる。
工事可能時間と駐車場所を最初に決めておくと、近所への挨拶のときに聞かれても答えられる。
まとめ
見積もり依頼では、場所と工事内容、広さの目安、希望時期、伝えられる範囲の予算、現地調査の候補日を整理すると話が進めやすい。全部決めてから連絡する必要はない。メール例文も、分かる項目に書き換えて使ってほしい。
見積もりで迷うことは、だいたい「頼み方」「待ち方」「比べ方」「断り方」の4つに収まる。この記事はその4つを1本にしたので、頼む前にざっと読んで、気になった所だけ戻って読み返してもらえれば、見積もりの段階でこじれることはほぼなくなる。
見積書が届いたあとの見方は見積書の見方、契約前の確認は契約書のチェックポイントにまとめている。
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